賃貸の契約キャンセル・クーリングオフはいつまでできる?

今回は賃貸借契約でのクーリングオフについて書いてみようと思います。

みなさんご存じの方も多いかと思いますが、クーリングオフとは一定の契約に限り一定の期間に無条件で申込みの撤回や契約の解除ができる制度の事を言います。
クーリングオフ制度ができた頃はよくこの言葉を聞いたものですが、最近では私の周りだけかもしれませんがあまり聞かなくなった気もします。

しかしとは言っても一度契約の意思表示をして、その後に何らかの事情で申し込みを撤回したりキャンセルをしたいと思うケースは誰にでもあるかと思います。

賃貸の契約でも同様にクーリングオフは適用されるのでしょうか。

スポンサーリンク

クーリングオフの意味は?

その前になぜクーリングオフという制度があるのか少しだけ考えておきたいものです。

通常の契約毎や取引において、一度購入の意思表示をした後は原則としてその取り消しはできません
購入すると言っておいてお金まで支払い、その後に「やっぱりやめますので返金してください」なんて言われたら、取引の相手方としても困ってしまいますからね。
ですから原則から言えば、一度契約をしてしまえば一方的な契約解除はできないという事になります。

 

しかしこの”原則”を全ての事に当てはめてしまうと逆に困ってしまう場合もあります。
例えば悪徳商法に騙されて契約をしてしまった場合、「契約済だからキャンセルはできない」という上記の原則ルールだけに縛られてしまうと、善良な消費者が保護されないケースも出てくるでしょう。

または訪問販売等で強引に売り込みをされて、こちらが希望してもいない商品を無理に購入させられた場合、騙された側は泣き寝入りする事にもなってしまいかねません。

もしくは個人間の契約であればまだしも、例えば会社と個人のように明らかに取引の力量に差がある場合には、個人側が不利な契約をさせられてしまう可能性もあるかもしれません。

 

このようにケースによっては消費者を保護すべき場面が生じる事があり、クーリングオフとはその名の通り、「一度頭を冷やして考え直す」期間を消費者に与えるものです。

「落ち着いて考えてみたら自分に不利な取引だった」「商品の内容を理解せずに言われるがままに購入してしまった」等のように、後々に落ち着いて考えてみると判断に誤りがあった事に気付く事も多いはずです。
そしてクーリングオフ期間内であれば原則ルールを適用せず、消費者から一方的に契約を解除できるのがクーリングオフ制度という特別法であると言えます。

 

賃貸契約に置き換えて考えてみても、一見すると確かに不動産取引は難しい用語が並んでいたり、業界特有のルールが存在していたりと、消費者には理解しにくい部分もあるように思います。
また初期費用なども高額になるケースが多い事から、なおさら取引後に「クーリングオフが適用されたら…」と考える人もいるのでしょう。

果たして賃貸契約でクーリングオフは適用されるのでしょうか。

 

賃貸契約もクーリングオフできる?

クーリングオフで主に対象とされる取引としては電話勧誘取引や訪問販売取引・マルチ商法などが挙げられるかと思います。
前述したように消費者が内容をあまり理解しないままに申込みや契約をしてしまう事があるため、一度冷却期間を与えて冷静に判断する事ができるようにこのような制度が設けられました。

それでは賃貸の契約ではこのようなクーリングオフ制度は適用されるのでしょうか。

不動産屋でもお店によっては誤解されるような勧誘をする会社もたまにありますし、正当な広告活動とは言えないような行動・勧誘をする店も実際には少数ながらあります。
その意味では賃貸取引もクーリングオフ制度の適用対象となっても不思議ではないのかもしれません。

 

しかし結論としては「賃貸はクーリングオフ対象外」という事になります(「売買」はクーリングオフ適用対象あり)。

賃貸契約後に、クーリングオフ制度を適用する事はできません。
なぜ賃貸契約ではこの制度が適用されないのでしょうか。

根本ともなる宅建業法を見てみます。

宅建業法 37条の2
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(事務所等)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除を行うことができる。(中略)

 

上記条文を見ても分かるように、不動産取引においてクーリングオフが適用されるには、

「不動産業者が売り主となり、宅地建物の売買契約で、事務所以外の場所で申し込みをした場合」という事になります。

という事は賃貸契約はやはり対象外という事になりますし、建築請負契約等も対象外となる事が多いです。
ですから賃貸の取引においてクーリングオフは認められない事になります。

その分賃貸の契約時には不明な点はしっかりと確認した上で、契約に臨むべきと言えますね。

 

賃貸の「申し込み」はキャンセル可能

すこし混乱してしまう人もいるかもしれませんが、あらためて賃貸取引の流れを簡単に見てみると

①部屋の内見

②申し込み

③審査

④契約

といった流れになる事が一般的です。

前述したように確かに賃貸契約においてクーリングオフは適用されませんが、申し込みのキャンセルは別です。

上記のように内見をしてから申し込みをする事になりますが、契約前であれば、申し込みをキャンセルする事ができます。

もし悪質な不動産業者などで「申し込み後のキャンセルはできない」等と言われた場合でも、キャンセルは可能ですので強く主張するようにしましょう。

 

ですがいくら申し込みキャンセルが出来るとは言っても、もちろん悪戯にキャンセルを繰り返して良いという事ではありません。
申し込み手続きが入った後は、大家さん・不動産業者などはその取引において色々と動いてくれています。

キャンセルをすればその分無駄骨になってしまう事もありますし、不動産業者や大家からの心象が悪くなる可能性もあります。
申し込みをする際は、きちんとその物件に住みたいと決心した時にしたいですね。

スポンサーリンク

申込金を支払った後でもキャンセルできる?

賃貸においても、申し込み時に申込金や預り金を徴収する不動産屋があります。

本来は預り金等は徴収する必要のないお金ではありますが、不動産業者の中には申し込み時にいくらかの申込金を支払うことが慣例となっています。

ですがこのような申込金・預り金を支払った後でも、契約前であればキャンセルは可能です。

もちろん預けてある申込金(預り金)は全額返金してもらう事ができますし、ペナルティ等もありません。

 

「申込金は既に大家さんに支払っていますので返金できません」等と言われる事もありますが、実際には家主には支払われていないでしょう。

また賃貸でも「手付金」を徴収している不動産業者があるようですが、本来手付金は売買契約にて有効なものであり、賃貸で手付金は禁止されています。

もし預り金等をどうしても返金してくれない等のトラブルがあった場合には、所轄の県庁や宅建協会等に相談をしてみても良いでしょう。

参考:宅地建物取引業協会

 

賃貸の審査中・審査後のキャンセルはできる?

申し込み審査中・審査後であってもキャンセルは可能です。

審査中であっても審査後であっても契約が成立する前であればキャンセルする事ができます。

中には、審査後であれば貸主の承諾が取れているのだから契約は成立しているという声もあるかもしれませんが、全ての手順を踏んで契約書にサインしていなければ契約成立には至っていないと考えられます。

宅建業法上でも

宅建業法第35条

宅建業者は契約成立までに、宅地建物取引主任者により、物件に関する重要な事項を相手方に文書を交付して説明しなければならない

と定められていますので、審査後であっても重説や契約書への署名・捺印等の他の手続きが済んでいない段階であれば、契約は成立しておらず、キャンセルは可能です。

 

賃貸契約後・入居後のキャンセルは?

先ほどからも挙げているように、キャンセルができるのは賃貸契約が成立する前であり、賃貸契約が成立した後は入居後のキャンセルはできません。

そのためもし賃貸契約後や入居後にキャンセルを希望した場合には、それはキャンセルではなく「解約」という扱いになります。

納得がいかない方もいるかもしれませんが、既に契約が成立してしまっている以上は、いったん締結した契約を解消するという手続き(解約)になります。

 

それではどの時点から賃貸契約が成立したと言えるのでしょうか。

一般的には以下の手続きが完了していれば賃貸契約は成立しているとみなして良いかと思います。

  • 重要事項説明
  • 契約書に記名押印
  • 契約金の支払い

そのため上記の手続き完了してしまった後にキャンセルを申し出ても、それはキャンセル扱いにはならず解約扱いにされると考えておいた方が良いでしょう。

 

解約という事になれば、既に支払っている仲介手数料や礼金は戻ってこない可能性が高いと思われますし、その他の支払い済の費用(敷金・火災保険・前家賃・保証料・オプション費用等)についてもケースバイケースです。

また解約時の予告については契約書に明記されているかと思いますので、もし「一か月前の予告が必要」と記載されている場合には、その分の費用がかかる可能性が高いと考えられます。

契約後にすぐに解約をしても希望通りの金額が戻ってこないため不満が募るかたもいるかと思いますが、契約を締結するという事はお互いの信頼関係あっての事であり、やはりすぐの解約の場合でも契約に則った費用を差し引いての清算となります。

そのため賃貸契約や申し込みの前にはしっかりと自分の気持ちを確認し、契約への意思が固まってから手続きをするようにしたいですね。

 

賃貸の申し込みキャンセルの理由は何にする?

考える人

どうしても賃貸の申し込みをキャンセルしなければならないケースもあるかと思います。

上記でも説明をしたように、契約成立前であれば基本的にはキャンセルは可能です。

キャンセル理由としては事実をありのまま不動産屋さんに話すのが良いと思いますが、中には言い訳や建前を考えたいという人もいるかもしれません。

よくあるキャンセル理由としては

  • 入院する事になった
  • 家族で不幸があった
  • 初期費用が用意できなくなった
  • 転勤する事になった
  • 他の部屋が決まってしまった

といったキャンセル理由が考えられますが、どちらにしても不動産屋側からは嫌がられることもあります。

また不動産業者や大家さんのネットワークというのは意外と狭いもので、例えばA会社とB会社の物件は違っても、所有する大家さんが同じなんて事も珍しくありません。

他の物件が借りにくくなる可能性もゼロとは言えませんので、出来るだけ突然のキャンセルは控えるようにしたいですね。

その物件を借りる意思が固まってから申し込みをするようにしましょう。

 

賃貸の申し込みをキャンセルしたら違約金が発生した?

賃貸の申し込みをキャンセルしたら違約金を払うように言われたというケースもたまに聞きます。

ですが違約金というのは「契約に定めた事項に違反した人が、相手方に対して支払う金銭のこと」を指しています。

申し込みの段階では契約自体が成立していない訳ですから、そもそも違約金というものも発生しません。

もし違約金を支払えと言われた場合でも、支払う必要のない金銭と考えられます。

参考記事:賃貸契約で入金後にキャンセルした場合の返金は?違約金はかかる?

 

賃貸キャンセルの連絡はメール?電話?

賃貸の申し込みをキャンセルする際の連絡手段はメールが良いでしょうか。それとも電話が良いのでしょうか。

実際には内容が伝わればどちらでも良いのですが、出来れば電話で話しをした方が良いでしょう。

キャンセルをしたいという内容を伝えると共に、相手の気持ちを害さないようにきちんと説明し、また物件を紹介してくれた感謝の言葉も入れた方が良いかと思います。

また相手方の手間や労力をできるだけ減らすためにも、キャンセルをする事が決まっているのであれば早めに連絡をするようにしましょう。

 

賃貸のキャンセル・クーリングオフまとめ

賃貸のクーリングオフやキャンセルについて挙げてみました。

クーリングオフやキャンセルは難しいケースがあったり、お金の返金がトラブルになったりと、賃貸トラブルの中でも多い問題かと思います。

大切なことは、その家に住みたいという意思がきちんと固まってから申し込みをする、という事です。

 

みなさんもトラブルになる前に内容をじっくり確認してから、申し込み・契約を締結するようにしたいですね。

それでは今日はこの辺で。

スポンサーリンク