不動産の自殺・事故物件の処理手順は?重要事項説明も解説

今回は自殺・事故物件について少しだけ書いてみようと思います。

自殺・事故物件というのは、その物件内で入居者が自殺したり他殺があった・火災による死亡があった物件等を言います。

また自然死なども死体の経過期間によって事故物件と取り扱われる事もあります。

そのような事故・自殺物件は次の入居者が借りる場合、当然に心理的嫌悪が発生するため、借り手が見つかりにくいという傾向があります。

またその物件を仲介する不動産業者としても事故物件を仲介する場合には重要事項説明にて借主にその旨を説明しなければなりません

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不動産内で自殺があった場合の処理は?

それではもし物件内で自殺があった場合の処理はどのようにすれば良いでしょうか。

もし家族等が同居していれば発見は早いかもしれませんが、単身であった場合にはその発見が遅れる場合もあります。

 

もし自殺からある程度の時間が経過している場合には、部屋の近隣から異臭ハエなどが大量発生する事があり、このような異常事態を近隣住民が察知して通報が入るというケースも多くあります。

そして室内に入り初めて遺体が発見され、事件性の有無を確認し警察へ搬送され遺体の身元確認が行われます。

そして警察の身元確認が終われば、室内の特殊清掃や消臭作業に入ります。

 

体液の異臭や汚れは通常のクリーニング作業では済まないケースも多く、特殊清掃業者に依頼する事が一般的です。

また清掃は自殺があった室内だけではなく、隣家や階下の部屋まで異臭やハエ等の被害が及んでいる可能性もあり、酷い場合には住人の退去に繋がる可能性もある事から、まずは影響が及んでいる周囲の部屋から清掃を実施する場合もあります。

 

また警察での遺体の身元確認が終了しない場合や、相続人が相続放棄を検討していてスムーズに室内の整理ができない場合もあり得ます。

この場合には遺族側に強制する事はできませんので、家主の方で清掃を実施する等を検討する必要が出てくるでしょう。

 

また清掃が完了したとしても部屋の原状回復の問題も残されており、遺族との負担割合を話し合いするケースもあれば、加入していた保険で対応できる場合もありますが、特に自殺・事故が起きた後の遺族の感情は不安定になっており、金銭的な問題を交渉する余裕がないケースも見受けられます。

 

結果としてなんとか部屋の回復が済んだとしても、次の入居者が簡単に見つかるとは限りません。

先ほども書いたように基本的に自殺があった物件では不動産業者は重要事項説明の義務があります。

そのため家賃を下げたり初期費用を下げる等の施策を取りますが、それでも長い期間、次の入居者が決まらないといったケースもあります。

また自殺があった室内だけでなく、周囲の部屋からも退去者が出る可能性もあります。

その結果アパート経営の利回りは低下し、最悪の場合には不動産を手放さなければならないケースも出てきます。

 

自殺物件のロンダリング

上記のように部屋内で自殺・事故が起こると、その部屋の入居率は下がりますし、周りの住民の退去の可能性や、今後の入居者募集が難しくなる事が想定されます。

ローンの支払いが行き詰まる事や、売却するにしてもそのような事故物件では簡単に買い手が見つかるとも限りません。

 

そのため亡くなられた方やご遺族の方には大変失礼な話ですが、そのような事故・自殺があった事を隠そうとする大家さんや業者がいる事も事実です。

自殺・事故があった場合には近所になるべく知られないように処理する場合もあります。

 

また宅建業者は前述したようにその事故物件を仲介する不動産業者は必ず重要事項説明にてその旨を説明しなければなりません。

図面などを見るとそのような物件の場合には「告知事項有り」等と記載されているはずです。

 

あらかじめ家賃の低い事故物件を狙っている借主さんも中にはいますが、通常の借主さんはその物件が事故物件である事を知ると、入居を断るケースが大半です。

まして単身世帯ならともかく、ファミリー世帯や新婚さんならそのような物件を借りる人は稀でしょう。

 

しかしこのように嫌悪される事故物件を、通常物件に簡単に変えてしまうロンダリング(洗浄)の方法が取られる事もあります。

その方法とは、一度その事故物件にサクラ(アルバイトや自社社員)の入居者を入居させるという事です。

自殺・事故物件において宅建業者によっては「一度でも次の入居者が入居すれば、次回以降は事故物件であることを説明しなくても、宅建業法には違反しない」と考える不動産業者も存在します。

 

そのため一度アルバイト等を一定期間そのアパートに住まわせ、事故物件である事をクリアにした上で、再度物件を貸し出すという手法を取る業者もあります。

ですから物件内で自殺が起きたとしても誰かが一度でもその物件内に入居すれば、それ以降の入居者には重要事項説明の義務はなくなるという解釈が存在しています。

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定期借家契約と事故物件

また最近多くなってきている「定期借家契約」も事故物件のロンダリングに利用される可能性があります。

普通賃貸借契約ではよほどの正当事由がない限り、大家さんから賃貸借契約を解約する事はできません。

つまり普通賃貸借では簡単に解約できない=借主が長期間入居する可能性が高いという事になります。

 

その点、定期借家契約は「期間限定」の契約です。

例えば1年契約とすれば借主さんは1年後に退去しなければなりません(合意があれば再契約は可能です)。

そのためあえて低家賃で短期間の定期借家契約を締結し、一定期間経過後に借主を退去させ、重要事項説明義務を免れた後に普通賃貸借契約として募集を出すというロンダリングの方法も取られる可能性があります。

もちろんその後に普通賃貸借契約で募集を出す時には周辺相場と同等程度に徐々に家賃を引き上げます。

 

またもっと極端な方法でいえば、マンスリー契約やウィークリー契約も考えられます。

この方法は業者側が旅館業等の許可を持っていないと不可ですが、マンスリー等の短期間で入居者を居住させ、退去した後に通常物件として普通賃貸借契約で募集に出すという方法です。

いずれにしてもロンダリングをしてから物件を新たに貸し出すという手段はどれも共通しています。

 

事故物件に重要事項説明義務は?

それでは本当に事故物件に重要事項説明義務はないのでしょうか。

先ほども書いたように、不動産業者さんの中には「一度でも次の入居者が入居すれば、次回以降は説明しなくても業法には違反しない」と考える風潮があります。

 

一般的には確かにそのような解釈が存在しますが、それは法律で決められているルールではありません。

自殺や事故が起きた部屋について、いつまで(何年後まで)説明をするべきかといった具体的な線引きも、宅建業法上には存在しません。

過去の判例を見れば賃貸の場合であれば大抵は2~3年とされていますが、事故が起こった後、具体的に何年間まで告知する必要があるのかという点については、はっきりと定まっておらず、事故の状況や程度によっても年数は変わってきます。

また賃貸よりも売買の方が、告知義務の期間は長いとされる傾向もあります。

 

ただし借主さんからしてみれば室内で事故・自殺があったという事は、十分に心理的瑕疵(借主が心理的な抵抗・嫌悪感を感じる条件のこと)にあたるものであり、事故があった事実をもし知っていればその部屋は借りなかったという借主さんも多い事でしょう。

また宅建業者はこの心理的瑕疵についても重要事項説明書で説明すべきであるとされており、もし違反があれば宅建業法違反等を問われる可能性もあると言えます。

そのため自殺や事故があった事により、借主が入居することに与える嫌悪感の程度がどれくらいの大きさになるのかという点も考慮する必要があり、告知の有無に関係してくる可能性があります。

 

不動産内で自殺があった場合の処理まとめ

このように事故物件というのは意外に多く存在するものです。

ご存知の通り、現在は高齢社会であり今後増々高齢化は進んでいくでしょう。

またアパート・マンション等での単身世帯も増加していく事が予想され、自殺・事故物件も以前にも増して増えてくる事が懸念されます。

 

一部では自殺物件でもロンダリングの手法が取られる事はありますが、それでも説明責任はきちんと果たしている不動産業者さんが殆どかと思いますので、借主さんとしては必要以上には心配する必要もないのかなという気がします。

もし内見をした時に部屋に違和感を感じたり、室内の大掛かりなリフォーム跡があったりした場合には、過去に何かあったかどうか担当者に確認してみるのも良いかと思います。

いずれにしても契約時の重要事項説明は理解ができるまできちんと聞いておきたいものですね。

それでは今日はこの辺で。

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