定期借家契約は貸主・借主から中途解約できる?違約金や正当事由は?

今回は定期借家契約について書いてみようと思います。

定期借家契約という言葉を初めて聞く方もいるかもしれませんが、定期借家というのは「期間限定の契約」です。

例えば契約期間が2年後と決めたらそこまで契約は継続し、2年後に契約は終了します。(双方の合意があれば再契約は可能)

また定期借家契約では途中で解約をすることができないのが原則です。

それでは例外として、定期借家契約において貸主・借主から中途解約できるケースとはどのような場合でしょうか。

またその時の正当事由や違約金等についても挙げてみます。

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定期借家契約で貸主からの中途解約

まず貸主からの中途解約の場合です。

定期借家契約において、貸主から中途解約は可能なのでしょうか。

答えとしては、定期借家の場合、貸主からの中途解約は認められていません。

普通賃貸借契約(通常の賃貸契約)では正当事由の有無等によって貸主からの解約が認められる場合もありますが、定期借家契約では契約中に貸主の事情が変わったとしても、契約期間内は貸主から解約することはできません。

 

定期借家契約の契約書面上で貸主からの途中解約が記されているものも時々ありますが、この特約は無効と解されてます。(借地借家法30条)

ただし貸主と借主の双方の話し合いにより、借主が立ち退きを了承する場合には、退去(解約)は可能となっています(合意解除)。

もし将来的に建物を使用する予定があるのであれば、例えば定期借家契約を1年未満などの短期間で設定しておき、再契約をし続けるという方法も考えられます。

 

定期借家契約で借主からの中途解約

それでは定期借家契約において借主からの中途解約は可能なのでしょうか。

定期借家の場合には借主からの解約申し出であっても、家主と借主が双方で合意して解約しない限り、途中で解約できないのが原則です。

また貸主としても借主からの解約の申し出には、特約がない限りは原則としては認める必要はありません。

 

ですが例外もあり、特約がなくても借主からの中途解約が認められるケースがあります。

例外

借地借家法38条5項

床面積200㎡未満の居住用建物の賃貸借においては、中途解約を許す旨の特約がなくとも、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、1ヶ月前の予告で借主から解約ができる

つまり

  • 居住用として使用
  • 床面積200㎡未満
  • 転勤、療養、新族の介護その他やむを得ない事情で使用を続けることができない

の場合には、1か月前に予告をする事により途中解約が可能という事になり、貸主はその申し入れを拒否することはできません。

ただしこれは「借主」からの途中解約の申し出の場合であり、「貸主」からの解約はできず、貸主は期間満了まで建物を貸し続けなければならない点に注意が必要です。

 

定期借家契約が1年以上の場合は通知が必要

定期借家契約は更新がなく、期間が到来したら契約が終了します。

ですが特に契約期間が長い場合など、借主さんがうっかり契約期間を忘れてしまう可能性もある事から、契約期間が1年以上の場合には、貸主さんは期間満了の「1年前から6月前」までの間に借主さんに対し、期間の満了により契約が終了する旨の通知をしなければならない事になっています。

 

逆に言えば、契約期間が1年未満の場合にはこの通知は必要ありません。

契約期間が短い場合には、借主が期間満了を忘れてしまう事は通常は考えにくいからです。

そしてもし貸主が「1年前から6月前」にこの通知を出すのを忘れてしまった場合(期限から遅れて通知した場合)には、その遅れて通知をした日から6月を経過した後に、賃貸借が終了する事になっています。

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定期借家契約の中途解約で違約金はとれる?

それでは借主が定期借家契約の中途解約を申し出た場合、貸主は違約金を受け取ることは出来るのでしょうか。

確かに貸主からすれば、途中で解約をされるとなると経済的なダメージもある事から、一定の違約金を取りたいという意向がある事でしょう。

また定期借家における違約金については、その「有効性」が問われる事も多くあります。

 

定期借家契約の中途解約における違約金が認められるためには、最低限として契約書に違約金条項が入っている事が必要と思われます。

例えば契約書に中途解約の特約が入っていたとしても、違約金条項がない時には、違約金を請求するのは難しいでしょう。

 

違約金の金額としては、その契約書の約定の金額を取れる可能性がありますが、相場としては賃料の1~3月分程度が相場のように思います。

もしくは法人やテナント等、借主が一般消費者以外の場合には賃料1年分の違約金とした判決もあるようです。

貸主の中には残りの期間の家賃全額を請求したい意向もあるかと思いますが、借主が一般消費者である場合には消費者契約法の適用があり、違約金の額があまりにも借主に不利益をもたらすような金額である場合には、一定額以上の違約金は無効とされる可能性がある事にも注意が必要です。

 

定期借家契約における中途解約の正当事由とは?

書類

先ほども挙げたように、借主さんが定期借家契約において中途解約をする場合には「やむ負えない事情」が必要です。

上記の借地借家法38条を見ても、「転勤、療養、親族の介護その他」と定められています。

ここで言う「やむ負えない事情」とは簡潔に言えば、通常予見できないような相当な異常事態を意味することが多いです。

  • 転勤
  • 療養
  • 親族の介護
  • 海外留学
  • 建物の他の部屋で殺人や自殺があった場合
  • リストラ(転職による転居)
  • 勤務先の倒産
  • 会社の解雇等(家賃が支払えない)
  • 暴力団が入室して安心して居住できない場合

などが、やむ負えない事情に当たる可能性があります。

 

「結婚」を理由に定期借家の中途解約はできる?

それでは例えば結婚を理由として、定期借家契約の途中解約はできるのでしょうか。

確かに借主さんとしてはそのような事情で解約したいと考える事もあるでしょうし、結婚が「やむ負えない事情」に当たるかどうかも難しい所です。

 

ですが定期借家契約の中途解約におけるやむ負えない事情とは、あらかじめの予測が難しい事情や、外部の事情に左右されやすい事柄を指していると思われますので、個人的には結婚は「やむ負えない事情」には当たらないと思われます。

定期借家契約は原則としては期間満了まで住み続ける契約ですので、余程の理由でない限りは中途解約が認められにくい事情があります。

 

ですが前述したように定期借家契約の場合には、貸主と借主の双方の同意があれば合意解除は可能です。

結婚という祝福すべき事情ですし、まずは貸主に正直にその旨を話してみる事から始めてみるのが良いのかもしれませんね。

 

定期借家契約は貸主・借主から中途解約できる?まとめ

定期借家契約における中途解約について幾つか挙げてみました。

定期借家契約は期間が満了すれば契約が終了し、貸主側としてもある意味では都合の良い契約です。

またそれを考慮して賃料も低めに設定されているケースが多い事から、借主としても期間限定で借りたい時には便利なのかもしれません。

 

ですがそれゆえに、定期借家契約では想定外のトラブルが起きる事もあります。

例えば契約時に不動産業者から誤った説明を受けた等の事例を聞くこともあり、定期借家契約を締結する場合には契約内容をしっかりと理解しておく事が大切です。

特に契約期間や特約の有無・違約金など、後々にトラブルとなり得る項目は十分に確認をしておくべきでしょう。

今後は定期借家契約を締結するようなシーンが増えていく事も想定されますので、契約の際には慎重に対応していきたいですね。

それでは今日はこの辺で。

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