家賃滞納の時効は何年?起算点や時効援用についても解説

今回は家賃の時効について挙げてみたいと思います。

賃貸で家を借りている人は家賃をきちんと支払っている方がほとんどかと思いますが、中には家賃を滞納してしまう人もいます。

家賃はきちんと支払っていくべきものですが、中には何年も長期間の間、滞納をしてしまう借主さんもいるものです。

そのような借主に対して、貸主さんも本来はすぐに対処をするべきですが、事情によっては滞納された家賃を放置してしまう事もあるかもしれません。

またそのような場合には「時効」が成立し、滞納された家賃を回収できなくなる可能性もあります。

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家賃滞納の時効は5年

それでは家賃の場合には、どのくらいの期間で時効となってしまうのでしょうか。

家賃の場合には5年で時効にかかる事になります。

家賃のように毎月定期的に発生する金銭債権については民法169条が適用される事になり、5年で時効によって消滅する事になりますので注意が必要です。

民法169条

年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
(定期給付債権の短期消滅時効)

上記の定めからすると、もし滞納してから5年経過してしまったら、貸主としては自分の債権全てが無くなってしまうのでは?と心配になる人もいるかもしれませんが、そうではありません。

時効が適用されるのは「5年を超えた分だけ」となるので、5年を超えていない部分の家賃については時効にかかっていません。

そのため、時効にかかっていない部分に関しては借主に請求することが可能という事になります。

 

家賃の時効は10年じゃないの?

先ほども少し触れましたが、家賃の時効を10年と考えている人も中にはいるかもしれません。

確かに通常の債権の消滅時効期間は民法167条1項により、原則として10年とされています。

民法167条

債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

つまり通常の債権は10年で時効にかかるとされていますが、家賃の場合は月単位や年単位など、期間を定めて一定額を支払うと定められていますので、民法169条の「「年又はこれより短い時期によって定めた金銭」に該当することになります。

そのためやはり家賃の時効は10年ではなく5年という事になります。

 

家賃の時効の起算点は?

それでは家賃の時効はいつが起算点になるのでしょうか。

家賃の時効の起算点は「支払期限の日の翌日」からカウントする事になります。

つまり最後に家賃を支払った翌月の支払い日の翌日から5年経過した日に時効が完成することになります。

例えば家賃の支払時期を「当月分を当月末日払い」と定めている場合で、これが5月であれば、5月31日までは時効期間は開始しておらず、6月1日が時効の起算点となります。

また家賃の支払時期を「翌月分を当月末日払い」と定めているような場合は、10月分の家賃であれば、10月1日が時効の起算点という事になります。

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保証会社を利用している場合の起算点は?

最近では多くの賃貸物件において、家賃保証会社を利用するケースが多くなってきました。

昔はきちんとした連帯保証人を付ければ多くの審査をパスできたものですが、最近では保証会社+連帯保証人が必要となる等、借主が物件を借りるハードルも高くなっているような気もします。

さて保証会社を利用していた場合、借主が家賃を滞納すると保証会社がこれを代払いする事になります。

この事を代位弁済と言い、同じく時効にかかる期間は5年ですが、時効の起算点は家賃の支払日ではなく「代位弁済があった日」になる点に注意が必要です。

保証会社から代位弁済があった場合には起算点が異なるので確認をしておきましょう。

 

家賃の時効の援用とは?

ハンマー

ただし5年が経過したとしても、何もせずに家賃の時効が成立する訳ではありません。

家賃を滞納している借主が時効成立の為の「行動」を起こして初めて時効が成立する事になります。

これを「時効の援用」と言います。

時効の援用の方法としては、内容証明郵便を貸主側に送付することになります。

普通郵便では送付した証拠が残りませんし、書留では文章の内容までは残りません。

そのため内容証明で「消滅時効を援用する」という意思を相手側に表示し、それを貸主側が受け取ることで時効の援用が行えたことになります。

 

家賃の時効を中断させるためには

ですが貸主としては、5年が経過して時効が成立する前に、なんとか時効を中断させたいと考えることでしょう。

そのため貸主にも時効を中断させるための手段が幾つかあります。

時効を中断させるためには、一般的に「請求」「差押え」「仮差押え」「仮処分」「承認」の措置のどれかを取る必要があります。

この中でも代表的な例が「請求」であり、例えば以下のような例が挙げられます。

  • 訴状の提出
  • 支払催促
  • 調停の申し立て
  • 和解申し立て

上記を見ても分かるように、請求とは言っても単純に借主に請求書を送る等では足りず、あくまで裁判上の請求が必要になるという事です。

また上記の他にも借主が一部でも家賃を返済した場合には債務の承認にあたり時効は中断しますし、強制執行にて債務者の財産を差し押さえた場合なども時効が中断することになります。

 

家賃の時効は何年?まとめ

家賃の時効について幾つか挙げてみました。

貸主からしてみればなんとか時効は成立させたくないものですし、借主からしてみれば時効を成立させ滞納家賃を免れたいと考える人もいるのかもしれません。

ですが時効成立というのは思っている以上に難しいものです。

時効成立を考えるよりも、まずはお互いの話し合いや歩み寄りにより、少しずつでも完済をしていく事を考えていきたいものですね。

それでは今日はこの辺で。

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